CXとは、カスタマーエクスペリエンスのことで、日本語で「顧客体験」と訳されます。顧客の商品・サービス購入や利用にかかわるさまざまな体験を価値として提供するところに、マーケティングの方向性を設定しようという考え方です。CXを向上させるためには、お客様が知りたいと思う情報を、最適なタイミングで届けることで、お客様とOne to Oneで適切なコミュニケーションを実現することが大切です。CXを向上させるには、大きく分けて「感覚を刺激する」「知覚を刺激する」「興味・関心や趣味嗜好を刺激する」というアプローチがあります。たとえば「丁寧」「親切」「快適」などを感じる接客に関する部分は「感覚を刺激する」アプローチといえます。もちろん、顧客が商品・サービスを実際に利用する中で感じる満足感や充足感もここに含まれます。「知覚を刺激する」というのは、店舗のデザインやレイアウト、香り、BGMがよかったというように、五感を刺激するアプローチです。Webサイトの場合はページの見やすさや操作性、そしてデザインなどもこれに含まれるでしょう。実店舗やWebサイトで商品を見つけやすい、購入までの動線がわかりやすいといった要素は、「感覚を刺激する」ところもありますが、この「知覚を刺激する」工夫が大きく影響すると考えられます。また、顧客のこれまでの購入履歴や、アンケート、SNSでの投稿などのデータからわかる好みやニーズをつかみ、そこにアプローチする方法が「興味・関心や趣味嗜好を刺激する」に該当します。これらの手法はそれぞれ単独で実施するものというより、上記の例にもあるように、複数のアプローチを組み合わせてマーケティング活動やプロモーションを行うほうが効果的といえるでしょう。
EXとは
EXとは、エンプロイーエクスペリエンスのことで、日本語で「従業員体験」と訳されます。働くことを通して従業員が得るあらゆる経験価値のことを言い、主に「働きがい」や「働きやすさ」に着目し、EX向上に伴って企業価値を高めようという考え方です。仕事から得られる充実感や、上司・同僚からの承認・評価、スキルアップや成長などの「働きがい」もEXですし、職場の環境や企業文化、労働時間、報酬や福利厚生などの待遇、ワークライフバランスの充実などの「働きやすさ」もEXとなります。世界規模の民泊仲介サイトを運営する「Airbnb」は、企業のレビューサイトであるGlassdoor.comにおいて「Best Place to Work」を受賞するなど、従業員が働きやすい会社として有名です。通常、EXの主導権は人事部にありますが、同社はEX専門部署を設けて、EXの向上に取り組んでいます。この部署では、採用制度や人事制度の構築だけでなく、従業員のキャリア開発、オフィス環境やデジタル環境、マネジメントルールなどを整えています。また、成果各国の料理を提供する社員食堂も有名で、「Global Head of Food」という社員食堂の総責任者を置き、戦略的に社食を運営しています。また、世界的コーヒーチェーンのスターバックスは、従業員に充実した学びの機会を提供することでEXの向上に取り組んでいます。大学の学費支給に加え、アリゾナ州立大学と提携して80以上の授業のオンライン受講をサポートし、また日本においても通信教育の補助をおこない、従業員のスキル開発を支援しています。EXを高めると同時に、従業員の能力を伸ばすことにも成功している事例といえます。