保守契約の目的
保守契約とは、パソコンやプリンター複合機、エレベータなどのハードウェアに障害が発生したときの復旧作業や、定期的な障害予防に関するメンテナンス、業務プログラムやWebサイトなどのソフトウェアに関する技術的な質問への対処、バグの修正や最新版への更新などのサービスを提供する契約のことをいいます。
保守契約は、機器を納入したベンダーと結び、納入したベンダーが修理担当者を持つ場合と、メーカーに再委託する場合があります。
保守契約を結べば、製品の故障や不具合が発生しても速やかに復旧・対応が図れるほか、修理コストの節減につながります。
障害発生時の対応はユーザーの顧客満足度に大きくかかわるので、ベンダーは契約内容の充実・改善に最大限の投資を惜しまず、迅速で誠実な保守契約メニューを用意しています。
必須となる条項
保守契約を締結する際に明確にしておく必要がある項目は以下の通りです。
①契約対象の特定
保守業務の対象を特定します。
定め方は様々ですが、別紙にて「機器名」「バージョン」、オプションがあれば「オプション内容」、その他必要な事項を記載します。
また、契約期間中にシステムをアップデートした場合は保守業務の対象となるのかを明確にしておくことも望ましいです。
②保守業務の具体的範囲
保守業務について「システムの稼働状況・障害発生の監視」や、「トラブル発生時の修復」など具体的な行為をできる限り詳細に特定します。
それは、曖昧な書き方による認識の違いが、相互の誤解や不信につながり、トラブルに発展するおそれがあるからです。
③保守業務の実施場所
保守業務の範囲は具体的に特定します。
そのうちの一つは、保守業務の実施場所です。
この点を明確にしないと、ユーザー側は、何かあればすぐに自社に飛んできてもらえる、などと誤解する可能性があります。
④保守業務の対応時間
保守業務の範囲は具体的に特定します。
そのうちの一つは、保守業務の対応日・時間帯です。
また、時間外の対応の可否やその条件(追加料金など)について定めるケースもあります。さらに、一か月あたりの作業時間や人数の上限を設定するというケースもあります。
⑤保守期間と料金
当然のことですが、保守契約の期間と料金について、明確に定めます。
なお、契約料金については、契約時に契約期間分を一括して定める方法、単価と工数を乗じる方法、作業内容ごとに定額の料金と定める方法、端末数に応じる方法、その他種々の定め方があります。
また、保守業務時間外の対応を行う場合の料金も明示することは望ましいといえます。
契約時の注意点
システム保守契約は、システムを開発したベンダーと締結するのが一般的ですが、開発ベンダー以外と締結することもあります。
開発ベンダー以外とシステム保守契約を締結する場合は注意が必要です。
システムや機器の保守は、運用とは違い、突発的なトラブルに対応する場面が多いです。
システム障害が発生した際の業務への支障を最小限に抑えるためには、システム稼働後に想定外のトラブルが発生した場合も、迅速に対応する必要があります。
そのため、システム保守の担当者は、保守対象となるシステムの仕様やプログラムの内容、システムの動作環境、ネットワーク環境などに関する幅広い知識とスキルを持つことが求められます。
保守対象となるシステムの仕様やプログラムの内容について最も深く理解しているのは、当然のことながら、そのシステムを開発したベンダーの担当者です。
そのため、システム保守契約は、システムを開発したベンダーと締結することが基本となります。
そのため、開発ベンダー以外の会社にシステム保守を委託する場合、保守対象となるシステムに関する理解不足から、システム障害の復旧作業が遅延する、根本的な解決が望めない等の結果が生じるリスクがあるという点は注意しておきましょう。
まとめ
今回は、保守契約の目的や内容や、開発ベンダー以外と保守契約を締結する場合の注意点などについて解説しました。
システムや機器を運用・使用する中で、突発的なトラブルが発生することは珍しいことではありません。トラブル発生時に迅速な復旧を図るためにも、保守契約は重要な役割を果たします。
保守契約は、開発業務の終わりの多忙な時期に締結されることが多く、慎重な検討がなされないまま締結されることがしばしば起こります。
しかし、保守契約は、システムの開発委託に関する契約と比べて一時的に支払う金額は大きくありませんが、5年、10年以上続く長期継続的契約となることも多く、結果的に大金を支払うこととなります。
また、保守契約はシステムの稼働中の対応に関するものですが、稼働中においてひとたび障害が発生した場合、業務に及ぼす影響が大きくなりがちです。
保守契約は、システムの運用や機器を使用するにあたってとても重要なものであるといえることから、慎重な検討・交渉を行った上で締結した方がよいでしょう。