PEST分析。大半の人は聞いたこともない言葉かと思います。
しかし、PEST分析は将来の事業の指針を担う重要なファクターなのです。
今回はPEST分析を全く知らない人に向けて、PEST分析の基本について説明していきたいと思います。
PEST分析とは
PEST分析とは、フィリップ・コトラー氏が提唱したことで注目を集めました。会社を取り巻くマクロの環境要因に焦点を当てて、事業の戦略的な案件をより有効的にするフレームワークの一種です。PESTの意味は、Politics(政治的・法律的な要因)、Economy(経済的な要因)、Society(社会的・文化的・ライフスタイル的な要因)、Technology(技術的な要因)の頭文字をとったものです。これらを分析することによって、社会のニーズや市場の変化、会社に及ぼす影響などが分かるようになります。
PEST分析は、3C分析やSWOT分析といった他のフレームワークと連携して使います。いくら事業を頑張り、成果を出したとしてもそれが外部環境からズレていれば、市場に名を連ねることはできません。逆に、早く外部環境の変化に対応できれば前線に立て、新事業を拡大することができます。故にPEST分析は、かなり早期の段階で行うことが望ましいと言えます。
PEST分析の各要素
Politics:政治的要因
まず1つ目、Politics(政治的要因)についてです。
政治的要因は、国が定めた法律、規制緩和や税制の変化、地方自治体が定めた条例といった強制力の伴う行政の動き、またそれらにつながると思われる動きが調査対象となります。政権交代やデモ行為でも世論が変わるため調査の幅が大きいのです。
市場においてその競争方法を決定するルールを変えるということは、市場を取り巻く環境に大きく影響を及ぼします。たとえ関係ない市場だったとしても回りまわって、自分に関係ある市場にまで少なからず影響を及ぼすこともあります。
例えば、2015年の食品業界では「機能性表示食品」が設けられました。それまでは、「特定保健用食品」や「栄養機能食品」といった認可や認証が必要なものしかありませんでした。しかし、規制緩和により機能性表示食品は、事前届出のみで機能性の表示が可能となりました。この規制緩和によって食品業界内だけでの競争ではなくなり、サプリメントの製造元も競争に参加することを余儀なくされました。
Economy:経済的要因
次にEconomy(経済的要因)です。
経済的要因は、景気の状態や成長率、為替・物価・株価・消費の変動といった景気や経済成長など「価値観の連鎖に影響を与えるもの」が調査分析の対象です。
国内だけではなく、諸外国の成長率や金利の変化なども追いかけていくことが必要です。貿易相手の国の購買意欲が高いなら、それに合わせて高価な商品を貿易の重心に移すという選択もできます。輸出入が多い事業の場合、為替レートで1ドルの価値が1円上下するだけでも利益に大きな影響を与えます。
身近なところだと食品があります。天候や病害虫により生産量の著しい低下により作物の値段が上昇すると、賄えない分は輸入となります。足元を見られた値段であっても必要性の高いものは輸入して食を支えなくてはなりません。また人件費によるコスト増加も無視できません。
収穫量の減少による輸入量の増加、原材料の値上がり、人件費の高騰による経営圧迫などで、瞬く間に強みを失う可能性があります。常に、幅広い視野をもって経済動向を注視することが重要です。
Society:社会的要因
次にSociety(社会的要因)です。
社会的要因は、企業や消費者を取り巻く社会全般を指し、流行や風俗、ライフスタイル、人口動態、社会事件といった需要構造に影響を与えるものです。
日本では未婚者の増加、離婚者の増加、少子高齢化による単身高齢者の増加が著しく、単身世帯への対応が必要となってきています。食品業界では単身者のために少量化や小分けによって好機を見いだしました。また働く女性や高齢者に合わせネットスーパーを設け、買い物に行けない人のニーズを勝ち取りました。
生活者の価値観は常に変化し、不要不急のものは買わないといった購買活動そのものの価値観にも変化が見られます。一昔前のバブル期では、「多く稼いで多く使う」という流れがありましたが、その流れは去り「コツコツ稼いでつつましく生活する」という価値観に移行しました。
Technology:技術的要因
そして最後にTechnology(技術的要因)です。
技術的要因は、技術の進歩や革新によりそれまで通用していた技術での競争力が失われたり、技術自身が新しい市場を拓くなどの、技術がもたらす環境変化で企業間での競争に影響を与えます。
例えば自動車の分野においては電気自動車やハイブリッド車、自動運転といった次世代技術の開発が長年行われています。その結果、技術の統合が起こり日産と三菱のような合併が行われるようになりました。
また食品生産の場においてITやロボット・AIの活用による生産性向上を図る技術革新が起こり、農林水産省も技術革新にとどまらず、経営者の生産性向上に対する意識向上を目的に研修会等を開催するなどしています。培われてきた勘と経験を集積、分析することで、品質のばらつきや収穫量の格差をなくすことが可能と考えられています。
今の時代、AI・デジタル技術はどの分野においても重要視され、消費者行動に影響を与え、新しい市場のチャンスを生み出し続けています。
PEST分析の必要性
なぜPEST分析が必要なのかと言うと、明らかにしたいことがあるからです。
・当該市場の変化を明らかにする
・市場の変化が自社を含む業界のプレイヤーに与える影響を明らかにする
・影響がある中で勝ち抜くための成功要因を探る
この3つが大切になります。
昨日まで販売できていた物がいきなり明日からは販売できなくなる、ということが起こるかもしれません。この変化を事前に知っていれば仕入れを止めるなどの対処が取れます。
やり方
その1. 目的を再確認する
競争環境を整理して把握し、現状の競争環境の状況と今後起こる可能性がある変化を把握する。
その2. 情報収集と分類する
まず仮説を立て、PESTそれぞれの要因で情報を集め、情報を基に仮設の検証を行うのがスピーディーです。
その3. 機会とリスクに分ける
PEST分析で導き出した情報はSWOT分析で利用する。
まとめ
PEST分析の基本を説明いたしました。
PEST分析をしてみたら、今まで見えてなかったものが見えるようになるかもしれません。
少しでも皆さんに理解を深めていただけたなら幸いです。