最近よく耳にするようになった「デザイン思考」や「デザインシンキング」ですが、自分はデザインに関わる仕事をしているわけじゃないから関係ないと思ってスルーしている方がいらっしゃるなら、それは大変もったいないことをしています。デザインと書いているので、デザイナーなどの専門用語のように思いますが、実は誰にでも有用で有効な思考手段の1つなのです。今回は、そんな「デザイン思考」について、初めてこの言葉を聞いた方にもわかるように説明していきたいと思います。
デザイン思考は新しいアイデアを生み出す思考方法
まず、思考方法というのは最終的に課題や問題を解決するための手段です。デザイン思考もゴールは課題・問題解決になりますね。基本的には、「ユーザーの願いを基にしてそこからどんどん新しいアイデアを出し、最終的には今までになかったものを生み出す」ということが一つの目的となります。
デザイン思考はなぜ重要?
人の歴史を遡っていくと、かつては「新しいモノ」を生み出すことが生活をより良くし、経済競争を生んでいくことができました。ところが最近はそのおかげで、必要なものや欲しいものは大体もうある状態となっています。ここから「新しいモノ」を生み出すのはなかなか至難の業ですよね。そこで、デザイン思考を用いて、既存のモノだけど新しい機能がついているとかもっと使いやすくなっているとか、
視点が変わってまるで新しいモノのようになっているなどの新しいアイデアを産み出しているのです。
デザイン思考は大手企業でも使われている!
こうしたデザイン思考は、大手企業でも使われています。例えば、P&Gです。この会社によって様々なブランドや商品が産み出されていますが、その中でも特に有名なので電動歯ブラシです。電動歯ブラシなんて、今やあちこちに販売している会社があるわけですし、基本形はなかなか発展させようがないですよね。いかに歯を綺麗に短時間で磨けるかという点に重きを置いて商品研究を進めていたわけです。
ところが、これが一変する事態が起こります。それが、デザイン思考による別方向からのアプローチなのです。電動歯ブラシを使っているユーザーたちが、電動歯ブラシに持っていた不満が明らかになったことで、そこから新たな機能を追加することができたのです。
●専用の充電器でなければ、充電できない。
⇒USBによって充電できるように既存商品を改善。
●交換用のブラシを買い忘れてしまう。
⇒本体にBluetoothを搭載し、アプリと連携、交換用のブラシが自動で注文されるように設定できる新機能を搭載
これが、B&Gの新たな電動歯ブラシとなりました。B&Gはここに至るまでに、デザインのプロであるIndustrial Facilityというロンドンの会社に相談しています。そこで、デザイン思考によって「ユーザーの現時点での希望(不満)」を明らかにすることになったのです。この事例を見ると、ユーザーの希望や不満が結果に直結していることがわかりますよね。デザイン思考で大切なのはその部分となります。
デザイン思考の流れ
デザイン思考は、一体どのような流れで課題・問題解決に至るのでしょうか。ハーバード大学に所属する研究機関「ハッソ・プラットナー・デザイン研究所」のハッソ・プラットナー教授が5つのプロセスをモデルとして掲げています。これをご紹介していきましょう。
1 Empathise―共感―
一番最初に、ユーザーの希望や不満を正確に捉えます。実際にユーザーにインタビューやアンケートを行って、ユーザーの「潜在的なニーズ」を探り出します。丁寧に、繰り返し観察していく必要があります。ここでは、課題や問題を明確にしていきます、
2 Define―定義―
「Empathise―共感―」で明らかになった課題や問題点をさらに深堀していきます。根本的な問題点は何か、真に迫っていく段階です。この過程によって、「Empathise―共感―」で明らかになった課題や問題点が違ったということも起こりえます。こうした場合は軌道修正をしていかなければ良い結果を得ることはできません。
3 Ideate―概念化―
抽出された問題点を解決する方法をどんどん出していきます。実現可能・不可能に関わらず、ありったけのアイデアを出すことが求められます。このため、「ブレインストーミング」と呼ばれる手法を用いることが多いです。
アイデアを出したあとは、それを分類してまとめていく作業もこの過程で行っていきます。
ブレインストーミングとは
1950年ごろから使われているミーティング手法です。チームでアイデアを出し合う時によく使われます。なんでもかんでも意見を出していいと思われがちですが、あまり関係ないものは最終的に省くことになるため、4つの観点を大切にして行っていくとスムーズに実施することができます。
・否定や批判はしない。
・斬新なものを受け入れる。
・とにかくたくさん出す。
・人のアイデアから派生、結合して新しいアイデアを出す。
たくさんのアイデアを出すだけ出して、最終的に分類していくのが目的ですので、ここではチームみんなが思いつく限りのアイデアを絞り出すことが求められます。
4 Prototype―試作―
この段階では、これまでのアイデアを基に試作品を作っていくことになります。完成品ではなくあくまで試作品です。これまで見えなかった、別の問題点がないかということを明確にしていきます。
5 Test―テスト―
実際に市場に商品を出して、新しい機能などがユーザーに受け入れられているかどうかを確認していきます。ユーザーの希望と合致した商品が出せていれば、良い結果となります。このためには、最後まで検証・改善を繰り返していくことになります。
こうした過程を踏んでいく中で、新しいアイデアや商品が生まれていきます。これを一人でやろうと思ったら難しいですし、良い成果を得るためには時間もかかってしまいます。また、様々な視点が必要になるため、基本的には一人ではなくチームで行っていくことが基本となります。こうなると、思考方法だけでなく、チーム内の円滑なコミュニケーションやデータ共有も求められていくことが想像できます
ね。
まとめ
デザイン思考はデザイナーだけではなく、一般の企業に勤めるビジネスマンにも必要な思考方法であるということがおわかりいただけたでしょうか。特に、今の時代に新しいモノを産み出そうとすると、必要不可欠な手法です。デザイン思考をしっかり習得して、新たなモノを産み出していきたいですね!